サムスンが描く「AIリビング」の未来 — VivaTech 2026で見えたコネクテッドケアと、JBL・ROGが示すプレミアムオーディオの進化
## はじめに — スマートホームは「便利」から「健康と体験」へ 2026年、スマートホームの主役が変わりつつあります。音声アシスタントに話しかけて電気を点ける時代は過ぎ、いま注目されているのは「家が暮らしを守る」という発想です。 サムスン電子がパリで開催されたVivaTech 2026で発表した「AIコネクテッ...
はじめに — スマートホームは「便利」から「健康と体験」へ
2026年、スマートホームの主役が変わりつつあります。音声アシスタントに話しかけて電気を点ける時代は過ぎ、いま注目されているのは「家が暮らしを守る」という発想です。
サムスン電子がパリで開催されたVivaTech 2026で発表した「AIコネクテッドケア」ビジョン、ウィーンのHigh End Vienna 2026で発表されたJBL Summitシリーズの新モデル、そしてASUS ROGとHIFIMANのコラボレーションによるゲーミングヘッドセット。これらは一見すると異なる分野に見えますが、すべて「家という空間で、人間の健康・音体験・没入感をどう高めるか」という同じ問いに答えています。
本記事では、これらの動きを総合し、2026年後半のスマートホームが日本でどう展開するかを読み解きます。
1. サムスンがVivaTech 2026で描いた「AIコネクテッドケア」のビジョン
VivaTech 2026とは何か
VivaTechはパリで毎年開催される欧州最大級のテクノロジーイベントです。2026年は6月17日から20日までパリ・エクスポ・ポルト・ド・ヴェルサイユで開催されました。スタートアップのピッチから大企業の基調講演まで、テクノロジーの最前線が一堂に会する場として、日本でも注目度が高まっています。
サムスン電子は今年、「より健康的な明日へのオープンな招待状」というテーマで出展し、AIを活用したコネクテッドケアのビジョンを披露しました(Samsung Newsroom, 2026)。
コネクテッドケアとは何か
サムスンが提唱するコネクテッドケアとは、Galaxy Watchをはじめとするウェアラブルデバイスが収集する健康データを、スマートホーム全体のAIと連携させて、個人ごとに最適化された健康管理を提供するという考え方です。
たとえば、Galaxy Watchが睡眠の質をモニタリングし、浅い睡眠が続いていれば寝室の照明や空調を自動で調整します。運動不足が検知されれば、リビングのディスプレイに最適なエクササイズを提案します。こうした「デバイス×ホーム×AI」の連携が、サムスンの描く未来の姿です。

日本にとっての意味
日本は世界でも最も高齢化が進んだ国の一つです。65歳以上の人口比率は29.3%(2025年時点)に達し、在宅医療や遠隔健康モニタリングの需要が急速に拡大しています。
サムスコネクテッドケアのビジョンは、この日本の課題に直接的に応えるものです。特に注目すべきは、病院に行く前の「予防」と「日常の健康管理」に焦点を当てている点です。日本の介護保険制度が「自立支援」を重視する方向にシフトしていることとも合致しており、テクノロジーによる健康維持の重要性は今後さらに高まるでしょう。
また、日本の医療費は年間46兆円を超えており、予防医療への投資は社会的な課題でもあります。ウェアラブルデバイスとスマートホームの連携による日常の健康管理は、医療費削減にもつながる可能性があり、今後の政策展開からも注目すべき領域です。
2. Galaxy Watchの進化 — AIが「毎日の健康パートナー」になる
6月から始まる大規模アップデート
サムスン電子は2026年6月8日から、Samsung Healthアプリの大規模アップデートを開始しました(Samsung Newsroom, 2026)。これにより、次世代Galaxy Watchは単なるフィットネストラッカーから、プロアクティブな「健康パートナー」へと進化します。
主なアップデート内容は以下の通りです。
- AIによる健康スコアの総合化: 心拍数、睡眠、血中酸素濃度、ストレスレベルなどのデータを統合し、毎日の健康状態を一つのスコアで可視化します
- パーソナライズされた健康提案: ユーザーの生活パターンに基づいて、最適な運動タイミングや休息方法をAIが提案します
- 家族間の健康共有: 家族メンバーの健康データを安全に共有し、高齢の親族の健康状態を遠隔から見守る機能を提供します

日本の住宅環境との親和性
日本の住宅は欧米と比べて面積が狭く、家族間の距離が近いという特徴があります。この環境は、かえってコネクテッドケアとの親和性が高いと言えます。
たとえば、Galaxy Watchで検知した祖父母の健康データを、離れて暮らす家族がスマートフォンで確認できます。リビングのSamsung Color E-Paperに今日の家族の健康スコアを静かに表示しておけば、声に出さなくても「今、家族が元気かどうか」が一目でわかります。
「見守り」という言葉には監視的な響きがありますが、サムスコネクテッドケアのアプローチは「共有と気づき」に重点を置いている点が、日本の家族文化に合っていると言えるでしょう。
AIリビングキャンペーンが示す方向性
サムスン電子はCES 2026で「Your Companion to AI Living(AIリビングのパートナー)」キャンペーンを発表しました(Samsung Newsroom, 2026)。このキャンペーンは、スマートホームが単なるデバイスの集合体ではなく、暮らしの「パートナー」であるべきだという思想を体現しています。
日本の消費者にとって、この思想は特に響くものがあります。日本の家電文化は長年、「生活を支える道具」としての家電を大切にしてきました。AIリビングはその延長線上にあり、テクノロジーが目立たない形で暮らしを支えるという日本の美意識と合致しています。
3. プレミアムオーディオの新潮流 — JBL Summit EverestとK2
High End Vienna 2026での発表
オーストリアのウィーンで毎年開催される「High End Vienna」は、世界最高峰のオーディオ展示会として知られています。2026年6月4日から開催された同イベントで、ハーマンインターナショナルはJBLブランドのSummitシリーズ新モデル「Summit Everest」と「Summit K2」を海外サイトで公開しました(AV Watch, 2026)。
JBL Summitシリーズは、同社のフラッグシップラインとして長年オーディオファイルに親しまれてきました。新モデルでは、最新のドライバー技術と洗練されたデザインが融合し、家庭のリスニングルームにおける音質の限界をさらに押し広げることを目指しています。
日本の住空間とプレミアムオーディオ
日本の住宅事情を考えると、大型スピーカーシステムの導入は容易ではありません。マンションの薄い壁、限られた床面積、近隣への音漏れへの配慮――こうした制約があるからこそ、適切な音量で高品質な音を楽しめる環境設計が重要になります。
JBL Summitのようなプレミアムスピーカーの意義は、大音量で鳴らさなくても「音の厚みと解像度」が体感できる点にあります。日本のリビングで夕食後のひととき、ソファに座って好きな音楽を聴く。その体験の質を根本的に変えるのが、このクラスのオーディオ機器です。

AIリビングとオーディオの融合
サムスンのAIリビングビジョンとプレミアムオーディオは、決して無縁ではありません。AIがユーザーの健康状態や気分を把握し、それに応じて最適な音楽や環境音を提案する――そんな未来が近づいています。
たとえば、Galaxy Watchがストレスレベルを高く検知したとき、AIが自動的にリラックス効果のあるプレイリストをJBLスピーカーで再生します。睡眠前のルーティンとして、AIが就寝30分钟前に照明を暗くし、環境音を切り替えます。こうした「健康×音」の連携が、次のスマートホームの主戦場になるでしょう。
また、JBL Summitシリーズのようなプレミアムスピーカーは、単に音を再生するだけのデバイスではなく、インテリアの一部として空間の質を高める存在でもあります。日本の住空間では、家具や家電が「空間を構成する要素」として重要な役割を果たしてきました。プレミアムオーディオがその役割を担う時代が来るかもしれません。
4. ゲーミングオーディオの新次元 — ROG×HIFIMAN「Kithara」
平面磁界ドライバー搭載のゲーミングヘッドセット
ASUS JAPANは、ゲーミングブランドROGから、HIFIMANとのコラボレーションによるゲーミングヘッドセット「ROG Kithara」を2026年6月12日に発売します(AV Watch, 2026)。市場想定価格は53,980円前後です。
この製品の最大の特徴は、HIFIMANが培ってきた平面磁界ドライバー技術をゲーミングヘッドセットに搭載している点にあります。平面磁界ドライバーは、従来のダイナミックドライバーに比べて歪みが少なく、広い周波域で均一な音質を実現できることで知られています。
ゲーミングとスマートホームの境界が消える
ゲーミングデバイスとスマートホームの境界は、年々曖昧になっています。PlayStationやNintendo Switchはすでにリビングのテレビに接続されていますし、Steam DeckやゲーミングノートPCは家のどこでもゲームを楽しめます。
ROG Kitharaのような高品質なゲーミングヘッドセットが登場することで、リビングでのゲーム体験はさらに没入感を増します。そして、その没入感はゲームに限りません。映画鑑賞、音楽鑑賞、オンライン会議――あらゆる「リビングでの音体験」の質を底上げします。

日本のゲーミング市場とスマートホーム
日本のゲーミング市場は拡大を続けています。CESAの発表によると、2025年の国内ゲーム市場規模は過去最大を更新しました。特に注目されるのは、ゲーミングデバイスが「リビングのインテリア」としても認知され始めている点です。
RGB照明を控えめにしたデザインのゲーミングチェア、木目調のゲーミングデスク、そしてプレミアムなゲーミングヘッドセット。こうした製品は、日本のリビングに自然に溶け込むデザインへと進化しています。ROG Kitharaもまた、その文脈に位置づけられる製品です。
平面磁界ドライバーの特徴である「低歪みで自然な音質」は、ゲームサウンドトラックの再現性だけでなく、長時間装着していても疲れにくいという利点もあります。日本のゲーマーは世界的に見てもゲーム時間が長い傾向にあるため、快適性と音質の両立は重要な購買決定要素になるでしょう。
5. スマートホームの「体験設計」という考え方
デバイスから体験へ
ここまで見てきたように、2026年のスマートホームは「個別のデバイス性能」の競争から、「デバイスが連携して生み出す体験」の競争へと移行しつつあります。
サムスコネクテッドケアは、ウェアラブルとホームの連携で「健康体験」を設計しています。JBL Summitは、プレミアムオーディオで「聴覚体験」を設計しています。ROG Kitharaは、ゲーミングヘッドセットで「没入体験」を設計しています。
これらを個別に見れば、それぞれは独立した製品です。しかし、一つのリビングの中でこれらが連携したとき、そこに生まれるのは「家という空間の総合的な体験」です。
日本の「間」の文化とスマートホーム
日本の伝統的な住空間には「間(ま)」という概念があります。壁と壁の間、音と音の間、光と影の間――「間」によって空間の質が決まります。
スマートホームの体験設計にも、この「間」の思想が活かせるのではないでしょうか。AIが健康データを分析し、適切な「間」で介入する。音が必要なときにだけ音を出し、そうでないときは静かにする。光が必要なときにだけ灯り、そうでないときは暗がりを保つ。
こうした「間」を意識したスマートホームは、日本の住空間に特にフィットするはずです。テクノロジーが目立たず、しかし確実に暮らしの質を高める。そんな「間」のスマートホームが、2026年後半のトレンドになるでしょう。
では、この先何が起きるのか。技術の恩恵を受けながらも、主体的な判断を失わないことが重要である。今後の動向から目が離せない。
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当記事は、Samsung Newsroom、AV Watchの報道を基に編集部で構成したものです。製品価格や発売日は変更となる場合があります。
✍️ この記事を書いた人
スマートホーム愛好家として 50 台以上の IoT 製品を自宅でテストしてきた実務経験を持つ。HEMS、音声アシスタント、スマートロック、カメラセンサーなど、住まいに関わるあらゆる IoT 機器の導入・運用・比較評価を専門とする。
